獅子が招いてくれた恋
 
『おい若いの、深夜徘徊で捕まるぞ?』

電話が終わったところで話しかけてみた。


「まこちゃん…」

一瞬、俺の方を見るとすぐに顔を背けた。
これ、たぶん泣いてる。


『はるか、なんかあった?』

問い掛けてもはるかは黙ったまんま。

ひょいっとこっちを向いたかと思うと、目に涙を溜めて、口は見事に“への字”だ。


「何でもない!」

って言って、ブランコからベンチへ逃げた。




何でもないわけがなくて、『あー、臭い。うあー、俺臭い』なんて思いながら肩を抱いて、頭を撫でてやるとヒクヒク泣き出した。


そしたら急に

「あたし、進路と生徒会忙しくて部活ほとんど行けなかった!
部長はギリギリまで謹慎食らってた!
辞めたり戻ってきたり、信用なんてないと思ってた!
今日の引退試合はボロ負けだった!
…だけど、みんな大好きなんだから!
うあぁ〜〜!!」

って言って、ガチで泣き出した。




今度は臭いなんて思わなかった。
はるかがガチで泣いてたから、俺はガチで抱きしめたくなった。
だから抱きしめた。

おかげで服は涙と鼻水で少ししっとり。




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