僕の死に方
 藤見正信に近づいたことで、彼の人格が少しずつ理解できてきた。
 表面的には、確かに臆病で、口篭もることも多い。
 だけど彼は、思った以上に頭がいい。そういえば、テストの成績なんかが悪いというのは、聞いたことも無い。
 そんな彼が、自分の置かれている立場に、疑問を持たないはずがない。
 恒常的に受ける苛めに、なぜ自分が、と鬱憤を溜めているのは、間違いないのだ。

「ねぇ、藤見くん。たまには、抵抗しないと駄目だよ」
「え?」
「じゃないと、今の状況は変わらないと思うんだ」
「う、うん……ごめん、でも、僕は……ごめん」
 ばつが悪そうに頭を掻く、藤見正信。
 その弾みに袖がまくれて、上腕部に痛々しい青あざがついているのが目に入った。
「僕は……その、こんな感じだから……堂島くんみたいには、出来ないと思う……」
 恐らく、僕の目の届かないところで、今まで以上の苛めを受けているというのは本当だろう。

 だけど僕は、その現場を探し出して止めようとまでは思わない。
 それでいいんだ。計画は、順調に進んでいる。
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