クリスティアナ
俺は睨むと元来た道を帰ろうと足を向けた。


「ちょっと待った!どこに住んでいるんだ?」


「言う必要はないだろ?」


「名前は?」


「関係ないだろ?」


「俺はキース」


街ではエドワルドで通っているのに本名を言っていた。



「キース?俺はエドワルドって聞いたぞ?嘘吐く奴は信用できない」


言い捨てると赤毛の男から立ち去った。



§ § § § § §


宿屋に戻った俺は外套を脱ぎ捨てズキズキ痛む腕の布を外した。


あの男の……。


自分の袖を引き裂いた時は驚いた。


布は柔らかく清潔だった。


血が付いてしまったがきれいな緑色。


「こんな上等な布を触ったのは初めてだな……」


腕の傷はまだ塞がっていなかった。


少し腫れていて熱をもっているのが分かる。


「っ……」


消毒液はない。


再びその布をぐるぐると巻きつけ、外れないように端を中へグイッと入れた。



< 23 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop