水嫌いマーメイド
ペラペラと話した意味を黒板に書いていってる先生。

『あれ……?』

今、思ったけど凄く一途な歌。

この世が移り変わっても貴方を忘れはしない、見返りを求めない、ただ愛した気持ちだけを詰め込んだ恋歌。

教科書には
“古今和歌集は平安時代に作られた最初の勅撰和歌集”
って、印刷された文字で軽々しく見えるけど、平安時代にも相手を一途に想う人が居たんだ……!

今は居ない、よみ人しらずさん。

あたしも、貴方みたいに一途に想える相手は現れるかな?逆に、想ってくれる人は居るのかな?

『今なら……人魚姫の気持ちが分かるかも…』

ポソッと呟いた言葉は、何かを応えるかのようにチャイムと風に消された。



「妃泉ぃぃ!さっきの歌良いよね!思わず惚れたよ♪」

授業が終わると同時に可耶が、あたしの席まで走ってきた。

『……うん。あたしも』

だって、あんな歌作られちゃうと思わず惚れる。惚れるというか、感心する。天才だと思う。

「何か、妃泉が変~!何か、不吉な事がありそぅ!」
『失礼な!至ってフツーです!』
「ほんとぉ~?」
『本当、本当!部活行こ?』

今日は、珍しく5時間授業。それに加えて、ホームルームは無しッ!これは、たくさん泳げるチャンス!!!!!
ウキウキし過ぎで、廊下を2人超ダッシュで駆け抜けていく。どこかのクラスの先生が「走るな!」って、注意されても馬の耳に念仏。注意されて傾ける耳なんて、あたしには生まれつき持って無い。

『とーちゃく☆』
「走ったぁ……マジ疲れたんですけど!」
「あれ?早いね、妃泉ちゃんに可耶ちゃん」

あたし達に気が付いた先輩が声を掛けてくれた。

『こんにちは!つい、走って来ちゃいました』
「元気ね、2人とも」
『可耶は陸に弱いみたいですね』

ぜぇぜぇと、息を切らせている可耶に皮肉っぽく言うと、アハハッと更衣室に笑い声が響き渡った。

< 11 / 45 >

この作品をシェア

pagetop