凶漢−デスペラード

9…セブンスタッド

竜治が店の中に入った瞬間、いつもとは違う空気を感じた。

入口近くに100インチの大型ビジョンがあり、中央にルーレットとバカラが並び、左右の壁際にブラックジャックのテーブルがある。
普段なら客で賑わっている筈のそれらのテーブルには誰一人として客は居なかった。

店内奥に仕切りをして設置したポーカーのコーナーから、異様な程の熱気が漂って来た。

ギャラリーが間仕切りから溢れている。

バーカウンターの中から大野が飛んで来た。

顔面蒼白だ。

「し、社長…」

「今、どんな状況なのか、詳しく話せ。」

「はい…」

店の開店時間と同時にヤンは一人でやって来た。
最初、ルーレットで遊んでいて、勝ったり負けたりを繰り返していたという。
雲行きが変わってきたのは、ルーレットで赤黒勝負を五連続で当て始めてからだ。

倍付けプッシュを五回もやられれば、たかが1ドルでも32ドル、つまり32倍に掛け金が増えるという事だ。

ルーレットで増やしたチップをポーカー用にチェンジし、ヤンはセブンポーカーのテーブルに移って来た。

ルーレットで得た多額のチップは、ポーカーという、ある種懐の勝負みたいなゲームに於いては強力な武器になる。


スタッドポーカー………

一般的に知られているポーカーはドローポーカーと呼ばれてるゲームで、基本的にチップの賭け合いは、最初にカードを配った時と、カードチェンジをした後の二回である。
スタッドポーカーはドローポーカーに比べると、格段にゲーム性と知的レベルがアップする。

スタッド…伏せた状態で一枚目のカードが配られる。
次に二枚目が、表を向けて配られる。
表向きになったカードの強い順番から時計周りでチップが賭けられて行くのだが、最低掛け金…アンティの金額に従って掛け合いが始める。
まだ五枚に満たないうちから自分の手の内と相手の手とを計りに掛けてチップを掛け合う。
伏せた一枚のカードというのが、言わばスタッドポーカーの肝になる部分で、そのカードの読合いが面白いのだ。
チップは、カードが一枚配られる毎に積み上げられて行く。
掛け金に対してコールしないと先には進めない。
仮に、三枚目のカードが配られた時点で、スリーカードが出来ていても、次の勝負に加われるチップが無ければお終いだ。

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