School Life

二時間目の授業が終わって
廊下を歩いていると

養護教諭の佐藤に話しかけられた。


「あの、高梨先生」


佐藤は三十代半ばの細身の小柄な教師だった。


「はい?なんですか?」


佐藤は困惑したような表情で圭介を見ていた。



「実は――
 相馬さんが保健室に来ているんです」



その言葉に
圭介は僅かに目を瞠った。


霞月は朝から教室には来ておらず
鞄もなかったから
てっきり休みかと思っていた。



「昨日怪我をしていたのは
 手首だけだったと思うんですけど
 今日は腕にも擦り傷のようなものがあって……。

 なにかご存知ですか――?」



すぐに昨日のものだと思い当たるが
返答に困り口ごもる。



「ええ、まあ……、少しは」



歯切れの悪い返事をする新任教師を佐藤は訝しげに見て、何かを追求しようとしているのがわかった。


しかし圭介は佐藤が言葉を発するよりも先に口を開く。


「いま、相馬は保健室ですか?」


「え?ええ
 少し寝ているみたいです。
 寝不足みたいで顔色もあまりよくありませんし……」


「そうですか
 じゃあ次の休み時間にでもうかがいますね」


不自然にならない程度に
にこやかに応えて

急いでる風を装ってその場を離れた。



(寝てる、か。

 昨日はどこで夜を過ごしたのか……)



家に帰っていたとしても
そうでなかったとしても


その答えは決して

圭介が満足できるものではないはずだ。


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