カベの向こうの女の子

春菜は携帯を片手に握ったまま、千秋の隣に座る



俺は無意識に春菜の携帯を見つめていた



「電話終わったのか?」



「うん、先生から誕生日おめでとうって」



春菜はそう言って笑った


胸の中にシャボン玉が割れるような嫉妬を、俺は覚えた



「わざわざ電話でねぇ。変だよな」



千秋が怪訝そうに春菜を見る



「別に変じゃないよ」



そう言ったあと、ふいに春菜は俺を見た



目があったはずなのに、春菜はすぐに俺から目を反らして千秋と話す



俺は不思議に思った







それから4人で雑談をして、それから春菜に違和感を感じることはなかった



だけど帰るまで心に引っ掛かっていた



あのすぐに反らした、いつもの春菜らしくない眼差しを












< 192 / 219 >

この作品をシェア

pagetop