カベの向こうの女の子
「ありがとう。寒くない?」
春菜が心配するから、俺はなんとなく口元が緩んだ
「さみぃ」
「ほら!別にあたし大丈夫なのに」
「大丈夫じゃなそうだから貸したんだよ。見てるだけで寒いし」
「そうかなー」
春菜は口を尖らせてそう呟いた
なんだか春菜には少し違和感を感じる
だけど、決して悪い違和感じゃない
彼女の横顔をチラリと見た
吐いた息が白くふわっと浮いて消える
たまにある電灯の光が微かに春菜の顔を照らした
白い肌に汚れのない綺麗な目
化粧はほとんどしていない
ああ、そっか
彼女はごく普通で俺とは違うのに
前から知っていたように、怖がりもしないで自然体で話す
だからちょっと違和感があったんだ
春菜がこんな性格じゃなければ、きっとこうしてのほほんと過ごせやしない
そんなこと考えていると、スーパーが見えてきた