カベの向こうの女の子
「お前なぁ、まずこっちの話し聞いてから首しめろよ!」
優は豪快に笑った
「ごめんごめん、ついね!」
何が つい だ
俺はさすがに殺意がわいてきた
だけど殺意はすぐ消え去った
「わかってもらえてよかったね。荒木くん、殺されちゃうかと思ったよ」
春菜が笑ってそう言ったから
しかも、初めて名前呼ばれた…
「おー、いきなりこんなとこ見せてごめん」
春菜は首を横に振った
「あ、お礼っていって、変なことする気じゃないでしょうね?」
優の一言でいい空気がぶち壊しになった
こいつがいなければ、今頃2人っきりでラブラブだったかもしれないのに
余計なことまでいってきやがる
「うるせぇ!てめぇどこまで俺に信用ないんだよ」
優はわざとらしく肩をすくめて、両手を上げた
「信用…?あるわけないじゃない」
憎たらしすぎる
俺は頭に血が上った
春菜の前で俺の価値を下げるようなことペラペラと…
「まぁ、今回は疑って悪かったわ。見直した」
見直した それを言われて、自分でも忘却の彼方に置き去ろうとした
誘拐 した事実が
頭に舞い戻ってきた