堕ちていく二人
工作


その夜深夜3時を過ぎた頃玲子は遺体の入った旅行バッグをクローゼットから取り出し、バッグを開けて隙間に鉄アレイを詰め込み琵琶湖まで運んだ。

途中深夜だったので運よく誰にも会うことはなかった。

月明かりの下、玲子は二つの旅行バッグを琵琶湖へ沈めた。

その夜は風もなく波も穏やかだった。

玲子がマンションへ戻る時も誰一人としてすれ違う人はいなかった。

玲子はリビングのドアを開けベランダに出て、満天の星空を見上げた。

そして、貴之と裕也と三人での幸福な未来を想像した。

すると、南の空に一筋の流れ星が尾を引いて飛んで行った。

一瞬の出来事だったが、流星を見た玲子は裕也の幸福な未来を願わずにはいられなかった。

裕也は両親の間に惨劇があったとは知らず、無邪気な寝顔でスヤスヤと眠っていた。

玲子はその横で2時間程、身体を丸めるようにして熟睡した。


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