堕ちていく二人


玲子が目を覚ますと、カ−テンの隙間から眩しい朝日が差し込んでいた。

裕也はまだ眠っていた。

玲子は熱いブラックコ−ヒ−を入れ、ゆっくりと飲みほした。

ベランダに出ると琵琶湖の湖面が朝日を反射してキラキラと輝いていた。

下を見下ろすと、湖畔の遊歩道にはジョギングをする人や、犬の散歩をする人が小さく見えた。

桂司を沈めた辺りを何も知らない人々が通り過ぎて行った。

午前8時になって玲子は桂司が勤務する銀行に電話をして

「夫の体調が悪いので、しばらく休ませて欲しい…」

と伝えた。

電話の応対に出た女性行員は

「分かりました、伝えておきます。お大事になさって下さい」

事務的に返事をした。

玲子は裕也を起こして朝食を食べさせ、いつもの所で幼稚園の送迎バスを見送った。

3日後、玲子は桂司の携帯電話を使って、銀行の同僚にメールを送った。


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