天狗様は俺様です!
 何で教えてくれたんだろう?

 本当の名前は教えてくれないって言っていたのに……。


「二人だけのときはそう呼べ。お前は、俺の唯一無二の女だからな」

「っ!」


 その言葉に、私は涙が溢れた。

 カイは、私を求めてくれていると感じた。

 体だけではなく心も。


 今まではっきりしなかったカイの気持ち。

 それが今、はっきりした。



 私はそれを、嬉しいと思った……。


「カイ……浬……。動くなって、命令しないんだね?」

 最後に、カイが私を下僕として見ているわけではないという証拠にそう質問した。

 下僕として見ていないなら、命令なんてしないだろうから。


 カイはニヤリと笑い言った。

「そんな命令、必要ないだろう?」

 当然のように言われ、嬉しかった。



 今なら言える気がする。

 今なら、あの気持ちに名前を付けられる。



 私は、カイの全てを受け入れる前にその気持ちを伝えようと口を開いた。


「浬……私――」

「カイ、ここにいたのか。探したよ?」


 突然、第三者の声がした。

 私はカイの翼で隠れているからその声の主の姿は見えない。


 見えているカイは、その人物を見て複雑な表情を浮かべていた。


 悲しいような。
 苦しいような。
 辛そうな……。


 その表情を見て、直感する。


 さっきの聞き覚えのない声。

 少年のような、大人の男性のような、不思議な響きを持つ声。

 その声の主は――。




 封印されていた、白鬼・ナギだと――。





《第六話 文化祭 【完】》

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