天狗様は俺様です!
「あ、私は本條実花といいます」

「っおい!」

 すぐにカイに叫ばれて、ハッとする。



 本名、教えちゃったよ。



 でも、ナギが私と契約したいと思うかは別の話。

 第一私と契約する理由がない。

 だから問題はないと思って顔を上げたのに……。


「ふぅん。実花さんって言うんだ」

 何か、含みのある言い方をされた。


 そのナギの表情は、カイが初めて会ったときに見せた表情を彷彿とさせる。

 カイも、私が本名を教えたときこんな顔をした。

 嫌な予感がする。

 まさかとは思うんだけど……。


「っ実花!」

 カイが叫び、私は近くにいた彼を見た。

 焦った顔が見えたと思ったら、次の瞬間には別のものが見える。


 何がどうなったのか分からない。


 ほんの一瞬の間に、私はカイではなくナギの腕の中にいた。



「え? は? な、何で!?」

 パニックになりそうな私の頬に、ひやりとしたナギの手が添えられる。

 カイとは違う冷たい手。


 その冷たさに驚き、私はパニックにならずに済んだ。




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