天狗様は俺様です!
「ナギの速さに敵うわけねぇだろ!?」

 と返される。


 この野郎。

 ああ言えばこう言うんだから!



 ついさっきまで甘い時間を過ごしていた相手同士とは思えない口げんかだ。

 でも、やっぱりカイのこういう子供っぽいところは腹が立つんだもん!


 ……それと同レベルの口論をしている私が言えることじゃないのかもしれないけど……。



 そんな口げんかを続けていると、私のすぐ側からクックッと押し殺したような笑い声が聞こえた。

 いつの間にかナギは私の頬に添えていた手を自分の口元に移し、文字通り声を押し殺していた。

 でもそれもすぐに無意味なことになる。

 耐え切れなかったのか、彼はぶはっと噴出したから。


 ナギはそのまま私の肩に腕と頭を預け「あっはは! おかしい!」と笑い続けた。

 最早笑い死にするんじゃないかと言うくらい。



 ええい!

 あんたは箸が転がるだけでも笑える年頃の乙女か何かか!?



 私は呆れながらも心の中で突っ込んでいた。




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