*coffret a bijoux*(SS集)
「………梓」



囁くように名前を呼ばれて
隣を仰ぐと、すぐに上を
向いたアゴはそのまま
柊弥のしなやかな指で
固定されてしまった。



そして名前を呼び返す
間もなく、重なる唇。



「ん…………っ」



少しだけアルコールの
香りのするキスが、最初は
浅く……そして徐々に深く。



絡まり合う舌と吐息に、
あたしの体は痺れにも似た
感覚を覚え始める。



「ん――ちょっと、柊弥……!」



キスが首筋に移動して
鎖骨の辺りに触れる指先を
感じた時、さすがに
あたしは焦って声を出した。



「な……にしてるのよ。

ここ、外だよ……!」



いくらなんでもこんな所で
それはダメでしょ。
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