アイ・マイ・上司【完全版】


だけれどソレは一瞬の事…、対峙する課長にサッと気を引き戻される。


顔色すら変化ゼロの彼を前にしては…――



「初歩的なミスが許されるのも今のうちだ。
今後ケアレスミスには、十分注意してくれよ?」

整った顔立ちが無表情だと、迫力まで増してしまうから困りモノ。



「すみませんでした…」

あまりにも無骨で、奥底まで射るほどの鋭い眼差し。


耐えきれない私は逃げるように、頭を下げて謝罪をするだけだ。


課長の発するすべてが、攻撃的に感じるから――



「付箋箇所を修正しながら、次は繰り返さないように仕事にあたって欲しい」


「はい・・・」


受け取った重い元帳をギュッと胸に抱えると、その諭しに再度頭を下げた。



すっかり下を向いた視線が捉えるのは、艶めき輝く課長の本革シューズ。


キズひとつ無く光沢を放つソレが、彼のすべてを完璧だと物語る。


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