ケモノ微熱38℃
温厚そうで紳士っぽいのに、スピード狂だった。
人は見かけに寄らないって、こういう事を言うんだと思う。
「あ、名前は?」
「……アリス」
「アリスちゃん、ね。俺は影虎」
きっともう会うことはないのに、彼はわざわざ名前を教えてくれる。
会うのはこれっきりになるだろうし、彼の名前を聞こうとも思ってなかった。
「あの時」
また静寂に戻ったのを壊したのは、彼の方だった。
“あの時”っていうのは、きっと車に轢かれそうになった時のこと。