貴方で酔わせて。-オトナの事情-
いつでも煌ちゃんは誤魔化すけれど、ドコを取っても“道楽の極み”といった商売形態だ。
バカラのグラスにBOSEのスピーカー、私がいま座るスツールにしてもそう。
周りを見渡すだけで目に留まるのは、彼の拘りである逸品だ。
「煌ちゃん、まだー?」
カウンターに両肘をついて、まだ登場していないお決まり品を催促した。
「だから伽耶、ここで“ちゃん”付けすんな。
今日はアーモンド入りしかないぞ?」
「もうっ、カルバドスにはね…」
背を向けたまま答えた彼の反応に、思わずムッとしながら返そうとすれば。
「“一口サイズで滑らかにとろける、ただのキスチョコがピッタリなの”――だろ?」
「…言わないでよ」
まさに口にしようとした言葉を、そのまま言い切られて悔しい私。
「何百回とウルサく聞かされりゃ、誰でも復唱出来るっつーの」
カクテル作りに夢中で、全くこちらを向いていないクセに。
拗ねてる事がバレているのか、クックと肩を揺らして笑う後ろ姿から目が離せない。