迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*上*




「好きな人ができるまで、でいいから。」


って、航くんは言った。



「好きな人ができたら、俺はすっぱり諦めるから。」


とも。



でも、そんなことは起こり得なかった。


そんな暇はなかった。


他の男の子が入る隙間なんてないくらいに、

航くんの存在は、私の中に色濃く入り込んできたんだから――






毎日必ずある連絡。


暇さえあれば会いにきて、
どれだけ寂しかったかを力説される。



会う度に、恥ずかし気もなく「好き」を連発して、
とびきりの笑顔を私に向ける。



最初は、すごく戸惑った。


どうしたらいいのかわからない。


だけど、

何せ、経験のない私。


“つき合う”ってこういうことなのか…

って、1人で勝手に納得しながら、状況に身を任せてしまっていた。




そしたらいつのまにか


それが普通になっていた。



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