迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*上*







―――…………

――……





「……え?なに?」



びっくりしたように航くんが振り返って、



「あ……」



私は初めて、自分のしていることに気がついた。






あれは、つき合い始めて少し経った頃。


ふたりで出かけた帰り道。


駅までもうすぐ。


駅に着いたらお別れ。


そう思ったら急に寂しくなって、私は無意識のうちに航くんの服の裾を掴んでいた。



「え…っと……」



言葉が出てこなくて、俯く私。



「どうかした?」



身を屈めて、心配そうに覗き込んでくる航くん。



……また、背伸びたな。


ぼんやり思いながらも、顔を上げて、航くんを見つめた。


目線を合わせてくれているはずなのにやっぱり私のほうが小さくて、微妙に見上げる格好になった。



「……」



視線が絡まること数秒。


なぜか、無表情のまま黙り込む航くん。



「……ズルイよ」



ふいに、ぼそっと何かを呟いたかと思うと、



「え……?」



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