迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*上*




あのときも、


こんな感じだった。





―――………

――……



中学校。

放課後の保健室。



眠っているみさきさんを、

俺はただ黙って見ていた。


他には誰もいなくて、


とにかく静かで……



窓から入ってくる風がカーテンをゆらゆら揺らして、ベットのそばを行ったり来たりしていた。



なんだか、


そこだけ時間が止まっているような気がした。


現実から切り離されてしまったような、なんとも不思議な感覚。


ベットで眠るのは、綺麗な綺麗な“お姫様”。


真っ白なシーツに、ふわっと広がる栗色の長い髪。


胸の辺りで、きちんと組まれた細い指。


それを見てしまった俺は、動けなくなった。


あまりにも“絵”になりすぎていたから……


どこかで見たことあるような光景。



……あぁ、そっか。



“眠り姫”だ。


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