スノー*フェイク


『(…1時間目は確か、数学だったよね)』



いそいそと机の中から教科書とノートを取り出し、肘を付いて再び教室を見渡した。



朝のSTが終わったところでざわめきだすクラスメイトたちは、正真正銘のお嬢様。





そんなこと最初から、わかってたのに。





…最近、妙にそのことが引っかかって仕方がない。




あたしは違う。


あたしは偽物。


あたしは庶民。




なるべく綺麗な体勢を意識しながら顔を机に伏せ、あたしは誰にも聞こえない小さな愚痴を零した。




……つらい、なぁ。




『(うわっ!泣くとこだった…)』




ガバッと勢いよく顔を上げ、目元を何度か擦った。


指先に、微小の透明な水滴が付く。



バカみたい。

ていうか、バカだ。



人目を気にする余裕もなく頭を軽く振り、嫌なことを払拭するように頬をぺしんと叩いた。


幸いにも教室の中に人は疎らしかいなくて、誰もあたしのことを気に留めている様子はなかった。



……良かった、のに。








誰かに気付いて欲しいと思うあたしは、なんなんだろう。







< 20 / 126 >

この作品をシェア

pagetop