スノー*フェイク
『(…1時間目は確か、数学だったよね)』
いそいそと机の中から教科書とノートを取り出し、肘を付いて再び教室を見渡した。
朝のSTが終わったところでざわめきだすクラスメイトたちは、正真正銘のお嬢様。
そんなこと最初から、わかってたのに。
…最近、妙にそのことが引っかかって仕方がない。
あたしは違う。
あたしは偽物。
あたしは庶民。
なるべく綺麗な体勢を意識しながら顔を机に伏せ、あたしは誰にも聞こえない小さな愚痴を零した。
……つらい、なぁ。
『(うわっ!泣くとこだった…)』
ガバッと勢いよく顔を上げ、目元を何度か擦った。
指先に、微小の透明な水滴が付く。
バカみたい。
ていうか、バカだ。
人目を気にする余裕もなく頭を軽く振り、嫌なことを払拭するように頬をぺしんと叩いた。
幸いにも教室の中に人は疎らしかいなくて、誰もあたしのことを気に留めている様子はなかった。
……良かった、のに。
誰かに気付いて欲しいと思うあたしは、なんなんだろう。