君だけしか映らない
「えっと…じゃあ加藤くんは決まりでいいかな…?佐伯くんはどうする?」


久々に荒川が話を振ってくれたのに、内容がこれって…


「…オレはやらない。」


オレがそう言うと一斉に女子たちが不満を言う。


「えー!!何でやらないの」

「絶対似合うのに〜!!」


「春樹もやるんだからやりなよ〜!!」



絶対やりたくない。自分の顔を売りにしてやるなんて真っ平ごめんだ。



「みんな静かにー!!佐伯くんはやりたくないって言ってるし、無理矢理やってもらうのも悪いから…」


「はぁ?委員長何言ってんの!?」


「そうだよ!!悠哉が執事やれば、売上も絶対いいし」

「まぁ…確かにそうなんだけど…。でも本人がやりたくないって言ってるわけだし…。そりゃあ、佐伯くんがやってくれたら私もありがたいとは思うけど…」


(…………。)


「でもやっぱり本人が嫌がっているのにやってもらうのは悪いから…」


「…やってもいい。」


「え……?」


「別に執事やってもいい」

オレがそう答えると女子たちがいっきに騒ぎ出す。



「その代わり、荒川…お前もメイドやれよ。そしたらオレは執事をやってもいい」


「えっ!!」


教室の中はさっきの騒ぎが嘘の様に静かになった。


「悠哉…お前マジで言ってんの!?」


ハルが慌てた様子で聞き返す。


「あぁ、マジだけど?クラスの為にオレが執事をやるなら、荒川だって委員長なんだからやるべきだろ?お前がやらないならオレもやらない」


「えっ、いや私は…メイド服とか似合わないし…」


「じゃあオレもやらない」

オレがそう言うと女子たちの鋭い視線が一斉に荒川に向けられる。


「っ……!!…わかりました。やります…」



こんな脅迫まがいなことやりたくなかった。

本当はただ荒川と同じ係になりたかっただけだった。


執事は見せ物みたいで嫌だけど、荒川が近くにいるならそれだけで嬉しい。



―――だけど、オレが無理矢理荒川をメイドにしたことによって、あいつをどれだけ傷付けてしまうのかこの時はわからなかった。


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