積もる思い、真実の愛。
柚希さんの実家はアパレル会社経営、そして桜井兄妹の実家は大手の商社経営。
ちなみに俺の家といえば、あまり知られたくないと滅多に言わないでいたが。
「どーせアンタの事だし、議員なんて畏まった事はシナイでしょ。
周りに気を使われるより、もっと手厳しい状況に身を置くのも手じゃない?」
さすがの頭脳の持ち主には、そんな考えもお見通しだから笑えるのだ。
「――それなら。柚希さんの期待以上に応えないと」
俺の親父は国会議員をしていて、長らく党の役員を務めているから政財界に顔が効く。
確かに親父の息のかかる企業へは簡単に入れるが、ツマラナイ事は目に見えている。
そうでなくとも。どのみち入社時点で、身上を訊ねられた時点で態度が変わる筈だ。
「ふふ、そう言うと思ってたわ。
昔から“天の邪鬼”なあっきーだものねぇ」
「…俺が、あまのじゃく?」
「好きな子に好きって言わずに泣かす、典型的なタイプのね」
「…恭哉ですか」
「あら、読モ&アパレル業の審美眼ナメないでよ」
自分の味方って…――この人には、なまぬるい盾なんか必要ないだろ?
こうして俺は、一笑に付した柚希さんの下で大学卒業後に働く事となったのだ…。