天使の悪魔



「なぁ、あんた名前は?」

パニックの私に、彼は名前を尋ねてくる。


「えっと、えっと…し…じゃなくて北山です。」

Q.私、どんだけパニクッてるの?

A.名前も忘れてしまうほど。(自問自答)


「北山?下の名前は?」

え?

下の名前?

お母さんは知らない人には名前を教えちゃダメって言ってたから…

「えっと…ん~…教えません…」

上手く誤魔化そうと思ったけど、私の頭はそれほど上手く回転できないから正直に答えた。

「は?何で?じゃ、俺の名前も教えるから教えて」


そっか!

彼の名前も知ったら知らない人じゃないから大丈夫か!

ん?

でも彼にとって私も知らない人だから名前教えちゃ…?

「千葉隼。あんたは?」


うひゃっ

バサッと自分の名前言い切ったな!!

「北山静……」

最後の「ず」の所は、自分でも聞こえないほどの音量で言った。


「え?何?何でそんなにウジウジしてんだよ。聞こえねー」

「きーたーやーまーしーずーでーすー」

クソう、ムカつく野郎だな。

私は音量を上げて言った。


「何お前、ぐれてんのかよ?」

そう言った彼は私の頭の上に手を乗せて撫で撫でした。



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