恋愛温度、上昇中！

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「ああゆう、いかにも、って感じが嫌」
「分かる！絶対うちらのこと馬鹿にしてるよねー」
「彼氏いない歴イコール年齢！」
「ああはなりたくない～」


ザワザワとした居酒屋。カウンターに座った私の背中越し、襖で仕切られた個室から聞こえる笑い声が聞き覚えのあるもので、その内容がまさに自分を指すものだと気付くのに大して時間はかからなかった。

会社の女の子達だろう。ああ、やっぱり真っ直ぐ家に帰れば良かった。
キンキンに冷えたビールが飲みたいと衝動的に立ち寄っただけの偶然に愚痴を零したくなる。
「あの眼鏡」とピンポイントで特徴を捉えた甲高い声が響けば、目の前に私を食べてと横たわる車海老のホイル焼きにも急激に箸をつける気が失せて行く。

彼女達の誰かがあの襖を開ける前に私は立ち去るべきだろう。自分の名前がはっきり出てこないうちに。大丈夫、悲しいかな、こういう事には慣れている。
はぁ、と息を吐いて残り半分になったビールを飲み干す。車海老は勿体無いから無理矢理食べた。
おひとりさまな私には気を使う相手もいない。本当は二杯は飲んで帰るつもりだったのだけど、あいにくこの場に留まり続ける図太さはなかった。