恋愛温度、上昇中!


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真っ直ぐうちに帰って、確かに疲れている筈の体をグッと伸ばす。いつもなら部屋着に着替えればリラックス出来るのに、今日はモヤモヤと胸の辺りが重い。
顔を洗ってスッキリさせようと、鏡の前に立てば、疲れた表情の自分と目が合う。
後れ毛も出さずまとめた黒髪にフレームのない眼鏡。必要最低限の化粧。奥二重の少し上がった目元のせいか顔立ちはキツく見られがちで、オフィススタイルを着崩す事もない。彼女達の言葉を借りれば『いかにも』な隙のない女。それが私、高見紗織だ。

陰口なんて気にしない、私は私だ、と胸を張れるのに、ときどき、ほんとに時々、不安で、寂しくて仕方なくなる。
今の自分を否定された気がして、弱くなってしまう。
誰かに、抱き締められたいと————思ってしまう。

そんな考えが浮かんだ後、重い溜め息を吐かないように飲み込んだ。
考える事も、しなくちゃいけない事も山のようにある。面倒くさくて放り投げてしまいたいけど、残念ながら性に合わない。
頭を乱暴に振っても、またぐるぐる巡るマイナス思考。
私の頭の中、いつも短絡的で、なのにどうしようもない位、厄介。
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