恋愛温度、上昇中!
薄暗い店内に、柔らかい照明がスーツに溶け込んで、山都さんは相変わらず掴みどころのない柔和な笑顔を向ける。
「…山都さん、冗談はほどほどにして下さい。飲み過ぎですよ」
やっとあたしの口から出たのは、カラカラに乾いた声。経験値が足らない。本当に、心底そう思う。こんな会話軽くあしらえる女でいれたならあたしは苦労しないのに。
「飲み過ぎたのは高見ちゃんだよ、顔赤くなってるけど?」
山都さんが眼鏡越しの瞳を細めてそう言った瞬間、ひやりとした何かがあたしの頬に触れて、
「…気持ちいーでしょ?」
それが、山都さんの指先だと気付くのに、たっぷり30秒は思考が停止した気がする。