少年少女リアル
第二章 消せない時間
 月が変わると、すぐに定期試験のムードが学校全体に広まっていた。
市内でも有数の進学校だからか、試験前の校内はピリピリしている。
僕はこのほどよい緊張感が嫌いじゃなかった。

それに、僕にとっては、この期末考査は都合が良い。
がむしゃらに勉強する事で、他の事など忘れたかったからだ。
勉強に没頭していれば、嫌な事など考えなくて済む。

忘れてほしい、そう告げた自分自身が一番忘れられずに逃げている。なんて滑稽だ。

向井さんとは、あの屋上で以来話していない。話すのが怖い。

教室で話した事など元々なかったわけだから、怪しく思われるはずはない。
けれど時々、佳月に感付かれているんじゃないかと怖くなる。
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