失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】

渇望の果て





「…母さん…知ってるの…?」

そう

僕はこの瞬間に賭けた

その言葉に

母の顔面は蒼白になった

「…な…何を…なに…を?」

狼狽える母に僕は畳み掛けた

「知ってるんだね…兄貴のことも」

諦めと絶望を突き破って

何かが僕をつき動かした

僕はじっと天井を見つめながら

母に言った

「…僕は…知ってるよ…あの人が

何をしたか」

母が息を飲む音が聞こえた

僕は続けた

「母さん…話してよ」

僕の声は緊張で震えていた

「僕は…兄貴を救うって約束した」

全ての言葉が一か八かの賭けだった

兄との秘密を未来を…

僕は有り金をすべて賭けた

絶体絶命の賭博師みたいに…

だが母は兄という僕の言葉を聞いて

自分の罪悪感の限界を

おそらく…越えた

「そ…それ…は…言えないの」

母の声も震えていた

「言ったら…私が…耐えられない」

僕はそれを聞いて

そのまま爆発した






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