失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】





毎年特別審査員は音楽業界では

かなり評価の高い実力のある有名な

ミュージシャンが選ばれる

今年はヒットメーカーとして有名な

中堅作曲家の一人だった

若い頃はコアなファンを持つ

ロックバンドのリーダー兼ギターで

かなり過激なパフォーマンスで

短い期間ではあるが

バンドはカリスマ的な存在だった

僕らはまだ小学生だったので

その伝説とPVしか見たことないが…



「さあ…審査員特別賞はっ!」

司会の声がひときわ高く響く

長髪に黒のロンドンブーツに身を

包んだ中年ながらやたらかっこいい

オヤジロッカー特別審査員が

司会から呼ばれる

会場から拍手と歓声が巻き起こる

舞台の司会席に立ち審査員自ら

受賞バンドをアナウンスするのが

このイベントの恒例だった

「では…お楽しみの審査員特別賞の

発表をします」

会場からまた歓声が沸く

「みんなレベル高くて選ぶのに苦労

したよ…でもこのバンドはその中で

荒削りながら魂を感じさせてくれま

した…《LOVE天使爆裂Kiss》!」





えっ



「マ…ジ…か?」



ヤツも僕も呆然と同じ言葉を

口走っていた







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