俺様狼と子猫少女の秘密の時間②
「うっ」
そ、それはそうなんだけど…。
一体なにがあったっていうの、空白の十年の間に!
「十年もありゃ人が変わるのには充分だよ。だってほら、生まれたばかりだった赤ちゃんは小学生になるし、九十くらいのじーちゃんはたぶん死ぬしさ」
いやいやいや!
最後のおかしいって!
しかもたぶん死ぬってちょっと!
分かりにくい例え持ってきたなこの人…。
「とにかく、だから俺もこっちに引っ越してきたわけ」
百歳過ぎても生きてるかもしれないし…なんて、今はどうだってよさそうなことをいつまでも悶々と考え込むあたし。
そんなあたしに、強引に話を戻そうと話しかける。
「引っ越して…んでここに入って。可愛い子がいるっていう噂は聞いてたんだけどね?」
「う、うわさ?」
「そ。名前聞いてびっくりしたよ。まさか同じ学校にいると思わなかった」
可愛い子って……あたしなの?
どういう噂だよ…。
「あ…でも。それならすぐ言ってくれればよかったのに」
そうだ。
そうしたらきっと、こんなややこしいことにはならなかっただろうに。
そう思って、少し責めるような口調で言ってしまった。
「いや…ね。うん、まあ。そうだよね。そしたらあいつに……とられないですんだかな」