短編集*君と紡ぐ、冬
健二くんの登校班の集合場所は、家から数分のところにある空き地です。
木が一本と、古い土管が置かれただけの広場ですが、近くに公園がないこの辺りでは、子どもたちが外で遊べるたった一つの場所でした。
野球をしたり、青くて丸いタヌキ型ロボットと遊んだり、ガキ大将が強制的に催すミニ・コンサートが開かれたりする広場なのでした。
健二くんが息を切らしながら空き地に到着すると、同じクラスの明くんがもう来ていました。
「おはよ、アキラ!雪だね!」
言わなくても分かりきっていることですが、うれしくてつい口に出してしまいます。
「フフフ、ケンジ」
明くんは意味ありげな笑顔で、健二くんに近づいてきます。
そして、後ろ手に持っていたものを、突然投げつけてきました。
「わ!」
次の瞬間、健二くんの視界が一瞬、真っ白になりました。
顔中に、冷たいのか痛いのか分からない感覚が走ります。
「やったな、アキラ!」
明くんが、ケラケラ笑いながら次の雪玉を作り始めました。
健二くんだって、負けてはいられません。
とびきり大きな雪玉を作って、仕返ししてやる!