短編集*君と紡ぐ、冬
健二くんが大きな大きな雪の塊を作っている間にも、明くんは小さな雪玉を次々作っては健二君に浴びせてきます。
「アキラ、ずるいよ!」
何がずるいのかよく分かりませんが、健二くんは思わずそう叫んでしまいました。
ようやく作った特大雪玉を持ち上げ、明くんに狙いを定めます。
危険を悟った明くんは、死に物狂いで逃げ出しました。
これが明くんに当たらないと、今までの努力が水の泡。
健二くんも必死で追いかけます。
「キャー!変態!この人、痴漢よ!」
追われる恐怖のせいか、明くんは訳のわからないことを口走っています。
雪のふりしきる広場に、二人の声がこだましました。
広場の端まで走ってきた明くんには、もう逃げ場がありません。
健二くんは持っていた雪玉を、力いっぱい明くんめがけて投げつけました。
明くんは、さっと身をかがめてそれをやり過ごします。
的を失った特大雪玉は、勢いを保ったまま、広場の隣の家に向かっていきます。
「あっ」
二人は我に帰ります。
だめ、この家は・・・
二人がそう思ったときには、もう遅すぎました。