短編集*君と紡ぐ、冬


歩くのが、好きだ。


職場から家までは、徒歩で25分。

車だと、信号に引っかからなければ5分。
中は暖かいし。
人目を気にせず、大声で歌えるし。
化粧しながら通勤もできる。
車のほうが断然、便利だ。

そうなんだけど。

徒歩はまず第一に、地球に優しい。
いくら時代はエコカーだからって、徒歩よりエコな乗り物はない。

それに、北国では車を動かせる状態にするまでに、少々時間がかかる。
寒風吹きすさぶ戸外に、一日車を停車させていると。
仕事が終わって帰る頃には、窓ガラスが全面、白く凍って曇りガラス状になっているのだ。
あるいは、車の形をした大きな雪だるまになっている。
運転に必要な視界を確保するべく、暖房ファンを最大にしながら、車に積もった雪をかいたりガラスについた霜をガリガリ削ったり。
それに少なくとも、5分はかかる。

5分間乗るためだけに、5分間時間をかける。
なんか空しい。


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