短編集*君と紡ぐ、冬
それだけじゃない。
私は、歩くのが好きなのだ。
もちろん、遠くの友達に会いにいける、車も好き。
新鮮な空気が体を通り抜けていく、自転車も好き。
でもね。
ポテ、ポテと、二本の足を交互に前に出すことで生じる、地味なスピード。
塀の上のネコと、同じ高さの目線。
靴の裏から直に伝わってくる、地面の感触。
どこかから流れてくる、おいしそうな匂い。
通りすがりに触れ合いを求めてくる、散歩中の犬。
歩くと、いつもは見過ごしてしまういろんなものを見つけることができて。
だから私は、歩くのが好きだ。