“無”な彼。



歩き始めてから、あと少ししたところで山内くんが口を開いた。



「お前、俺のこと好きなんだっけ」


「……ふぇ!?」


思いがけない一言に私は変な声をだしてしまった。

すると、山内くんは笑った。



「前も言ったけど、好きなんて初めて言われた」


「…だって、それは山内くんが女の子を無視するからでしょ?」


「まあ、それもそうなんだけど」


“人って苦手なんだよ”

そう言って山内くんは軽く笑った。



「でもその、“人”から好かれるっていうのは嬉しいことだよな。…どんな意味でも」


それからの沈黙はとても長く感じた。



「山内くんは私が言った好きっていうのを、どんな意味だと思った?」


そして、その沈黙を破ったのは私。



「人間的、っつーの?」


「…違うよ」


じゃあ…、と言う山内くんの言葉を遮って私は言った。


手をつないでるとは違う意味でのドキドキ。



関係が壊れる?

もともと、私達は関係なんてないもん。


こういうのを伝える時は勢いとそのときの…。



「恋愛的…かな」



……溢れる感情だけでいい。


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