ハネノネ
会話をするわけでもなく、僕らは居間でふたり座っていた。
横目で見るナキはやっぱり綺麗な顔立ちで、色も白く手足は非常に華奢だった。
特に気を使う必要もなさそうなのは楽でいい。
そう思っていた時、家のチャイムがなった。
「ごめんね、ちょっと資料を取りに来たの」
出てきたのは先ほど会ったばかりの姉だった。
どうせ人などほとんどいないのだから、わざわざチャイムなど押す必要ないのにと思いながら家にあげた。
姉は居間にいるナキを見ると、すぐに僕を引っ張り、小声で聞いてきた。
「この子、ハネの病じゃない。どうしたの?」
「ナキっていうんだ。倒れてたから…拾ってきた。」
さすがに“最期を見たいから”とは言えなかった。
姉は座っているナキに歩み寄り、目線が合うように屈んでにっこりと笑った。
「初めまして、ユウヤの姉のマリナです。よろしくね」
ナキは姉が握手を求めて伸ばした手に、恐る恐る触れた。