ハネノネ

ふたりぶんの薬をユウヤの隣に添えて、わたしは久々に家に帰った。



自分にワクチンを注射して、ソファに腰を下ろし一息ついた。



ワクチンを打ってしまった以上、しばらくは私ひとりの生活だ。


寂しくはなかったが、どことなく虚無感だけが残った。






知りたいことがたくさんあった。


ハネについても、ナキについても。



でもそのままふたりで逝ってしまうということは、きっとあの世までその秘め事を持っていくつもりだったのだろう。


私は今まで、なにを調べていたんだ。



たくさんの犠牲の上で、私ひとりしか生き残れなかっただなんて、


なんて情けない話なんだろう。



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