王子様の甘い誘惑【完】
「さぁな。一時間以上入ってるかも。今日はゆっくり入りたい気分だから」
「い、一時間!?」
そんなに長い時間入っていられたら、たまったもんじゃない!
ここで意地を張っている場合じゃないかも……。
蓮に一生ネタにされたって、雷が怖いんだから仕方ない!!
「……お願いします。先に入らせてください!!」
理由は言わずに頭を下げると、蓮は「分かった。先入れ」と拍子抜けするくらい呆気なく譲ってくれた。
「あ、ありがとう!!」
「早く入れって。雷近付いてきてんぞ」
お礼を言うと、蓮はクックと喉を鳴らして笑っていた。
……悔しいけれど、全てを見透かされていたみたい。
あたしは恥ずかしさを堪えながら、リビングを飛び出した。