透明な翼
翌日。

といってももう夕方なんだけど。

出勤の一時間前に目を覚ました僕は、とりあえず風呂に入った。

昨日あのまま寝ちまったからな……

なんかベトベトしてたし。

そのあと簡単な朝食……違うな。

少し早めの夕食を取ってアパートを出た。

この十数分後、思いもよらぬ展開が待ち受けていることなど知るよしもなく。




約十五分後、僕は店の裏口のドアを開けていた。

中に入って奥のロッカーへと足を進め、制服に着替える。

そのあとで女の子たちの控え室に行って軽く挨拶した。

「おはよーございます」

この挨拶にももう随分慣れた。

この世界では夕方や夜であっても“おはよう”から始まる。

「あ、幾斗ぉ~おはよ」

既に出勤していた数名の子が振り返って言う。

その中のひとりが僕に向かって言った。

「なんか今日新入りの面接があんだってよぉ?」

新入り? 初耳だな。

「店長言ってたけど、そろそろ来るらしいよ」

「……そっか」

まぁ僕には関係ないことだけど。

出来ればあんまり自主的な子じゃないといいな。

少なくともお誘いの話しを持ってこないような。

そんなことを考えていたときだった。

正面入り口の自動ドアの開く音がした。

「……あの、すみません……」

女の声? あぁ、例の面接の子か。

すると奥から出てきた店長(僕より6つ年上のそこそこイケメン)が僕たちに言った。

「おら、オメーらはさっさと仕事しな。隣りの空き部屋使うから入ってくんじゃねーぞ」

はーいと揃って返事をした。

店長はいい兄貴といった感じで、みんなからは慕われている。
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