火星より愛を込めて
 マックは、目の前が真っ暗になった。動力ジェネレーターのパーツと言えば、1グラムほどしかないものでさえ2千クレジットぐらいする、高価な部品の集合体なのである。

「に、2万クレジットだとぉ!!」

 2万クレジットと言えば、ミントから支払われた報酬の前金と同額である。これで、前金が帳消しになってしまった。

「あーあ、俺の2万クレジットが……」

 マックは、首をだらりと下げて、すっかりしょげてしまった。

「マック、そんなに落ち込むなよ、その前金がなかったら2万クレジットの赤だったんだから。それに仕事を済ませれば残りも入って来るし……」

 キムは、マックを慰めつつ、船体の最終チェックを済ませた。

「ああ、そうだな、キム、出発だ」

「了解」

 キムは、手元のコントローラーで、格納庫の出口を開き、ジャッカルの動力を調子の良くなったエンジンに回した。

 ジャッカルは、格納庫を出て、地上へ繋がる宇宙船用離着陸トンネルから勢いよく大空へ飛び出した。

 一路火星へ、ジャッカルは、厚い大気を引き裂き、重力の井戸の底から無限の宇宙へ消えていった。
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