化学室のノート【短編】
帰ってから
ピンクのクッションを抱いて、
あの人が貸してくれたCDに耳を傾ける。
「きれいな声………」
まるで天使が歌っているかのように
心地よいその音色は
甘い吐息のように
わたしの耳をくすぐってくる。
「どんな歌詞なのかな……」
CDのジャケットをはずして
歌詞カードをめくる。
左側には英語、
右側には日本語訳が書かれていた。
「きれいな歌詞……」
会いたくても会えない
大好きな人を思い続けるという内容だった。
このひとの好きな人は死んでしまっているのだろうか。
それとも、
わたしのように会いたくても会えないひと?
そこで
はた、と気付く。