化学室のノート【短編】
こうしてノートを使って話しているから特別なんだ。
あのひとがどこの誰か分かってしまったら、
きっともうノートを使って会話することなんてなくなる。
たとえ、会った後にまたノートで話したとしても…きっと印象は変わっちゃう。
「もう少し、
このままがいいな」
願わくば、
春が来て三年にあがるまでは。
そっと、
目を閉じる。
この声は、あなたへの想いのようだ。
切ないような、
それでいてもどかしいような、
心を締め付けるような声色。