聖歌をキミに

だが、今のこの時、

額から流れる汗や乱れた髪、

崩れたスーツなんてものは、

どうでも良かったんだ。


俺はポケットから携帯を取り出し、親指で力強く開いた。


そのまま、電話番号を
『〇〇〇―△△△△』
光のように打ち込んだ。


自転車をこぐ足は止めずに、

携帯を耳にあててじっと待つ。


プルルルル……プルルルル


一秒が永く感じる程の沈黙。


「頼む!! 頼むから、早く出てくれ……頼むから……」


携帯を握る手が、自然と汗ばんで来る。


< 2 / 5 >

この作品をシェア

pagetop