聖歌をキミに
事件
空が燃え、茜が全てを包む頃、緩やかな傾斜の坂を俺は自転車でかけ上がっていた。
額からは滝のように汗が滴り、
きちんと整えていた髪の毛は、
舞い上がって乱れている。
「クソッ!! 一体何なんだ!!」
ペダルを踏み潰す勢いで自転車をこいだ。
俺が着ている黒いスーツは、最早見る影もないほど崩されて、
とうてい社会人の卵には見えなかっただろう。