ダークエンジェル

「慣れだよ。
今、相手をした僕の感じでは、
お前の球筋、吉野さんと似ていた。

頑張れば吉野さんのような選手にだってなれる。」



リュウはお世辞などとは無縁、と言う事はわかっている石田。

その言葉を真摯に受け取っている。



「そうか。他、何を気づいた。
なんでも言ってくれよ。
俺、少しでも強くなりたい。」


「うん… 慣れたら相手の足の向きで、
ボールがどの辺りに来るか、察知するんだ。

とにかく打てるボールは絶対に逃すなよ。」




水嶋が2年の秋、部長になった頃から、

学校対抗試合になると、
リュウはいつも部長の水嶋とダブルスを組んでいる。

そうすれば他のメンバーが総崩れしても、

そのダブルス組だけは勝てる、
全員負けは免れる、
という方針で来ている。

勿論個人対抗戦でも、
リュウは結果を出しているから、

その実力は誰でも分かる。

今まではそんなリュウと山崎の存在で、

曙高校テニス部の名前もよく取りざたされていたのだが… 





「リュウ、今日はさっさと家に帰れよ。」



練習が終わり、皆で駅まで来ると、

一駅でおりる水嶋がリュウに声をかけた。



「・・・」



さっさと帰れ、と言われたが
リュウは一駅手前でおりている。

用があるわけではないが… 

何故か真っ直ぐ家には帰りたくなかった。

父の帰りは夕食の頃、
まだ数時間は帰らないだろう。


リュウのおりるところは静かな住宅街、
コンビニぐらいはあるが、

大抵は一駅手前の、
この駅前の大きなスーパーで買い物をする人が多い。

車を運転する美由紀もそうだ。
< 16 / 154 >

この作品をシェア

pagetop