ダークエンジェル

4年前、
56歳の信秀は、
自分の研究室に助手としてきた
31歳の中川美由紀に恋をして… 

数ヵ月後には結婚していた。

美由紀は、かずら(8)とのぞみ(6)という
二人の子供を抱えたシングルマザー。

どうやら信秀は彼女の環境に同情したきらいもあった。

絶対に受け入れたくないリュウだったが… 

大きな声で反対は言えなかった。


リュウは私学の中学へ入った。

嫌な思い出が残る学区の中学では気が乗らないだろう、

と考えた父が決めたのだ。

その直後に美由紀という存在を知り… 

リュウが心穏やかでない時を過ごしている間に、

新しい家族が出来てしまった。

中学生になった、と言ってもまだ小学生並の背丈しかないリュウ。

新しく妹になったかずら、
小学3年と言うのに… 

初めから好きになれなかった。

初めから、父のいない時の家庭は… 

他人の家みたいだった。

そう、それまではすべてが自分の生活スペースだったが、

以後は自分の部屋だけ、
それも部屋に鍵までつけた。

父は、成長の証、と何も言わなかった。



しかし、リュウの中学生活は悪くなかった。

特に、何となく隣の席になった奴に誘われて入ったテニス部が

楽しいものだと感じた。

まだ背は伸びていないが、

どうやらリュウには運動に対する能力があったようだ。

登校拒否をしていた頃、

空手道場へ通っていたのが幸いしているようだ。

先輩部員も自然体で接してくれ… 

人と会話する事の楽しさを初めて感じていた。

そして、
そのままエスカレート式に高校に来ている。

毎日部活の生活… 
決して嫌ではなかった。


< 3 / 154 >

この作品をシェア

pagetop