汚レ唄
台所に立つお母さんのお腹に手を回して、ギュウッと抱きついてから息を吸って吐く。
ふわりとお母さんの香りが心の中を駆け巡りあったかい気持ちで一杯になっていく。
「どうしたの?」
優しくてあったかくて、柔らかな手の平が、頭の上へと落ちてくる。
大好きなお母さんの優しい手。
「あのね!!麻緋ちゃんが遊んでくんないの」
「どうして?」
頭の上に降り注ぐ声が、安心を与えてくれる。
お母さんの声は魔法の声。
自然と涙が引っ込んでいく魔法の声。
「……漫画読んでるから?」
「もうっ!!あの子は!!」
どうして、僕と遊んでくれないのかはわからなかったけれど、適当に答える。
すると、お母さんは角をニョキニョキと伸ばして、鬼のように目をつり上げた。
やった。
コレで、お母さんが麻緋ちゃんを怒る。
お母さんに怒られた麻緋ちゃんは、いつもしぶしぶだけど、僕と遊んでくれる。
だから、遊んでくれない時はお母さんに泣きつくのが一番なんだ。