汚レ唄


麻緋は姉なのだと、何度自分に言い聞かせてきただろうか。



姉とは結婚できないと、何度言われ続けてきただろう。





「だったら俺は一生結婚しねー」

ぼそっと呟いた。




「今、なんか言った?」

友達が振り向きながら聞き返す。


「……なんも」


そう答え、雑誌をパラパラとめくった。

だけど、俺の視線の先には、麻緋がいた。



そう、いつだって、俺の視線の先には麻緋がいたんだ。


麻緋に特別な感情を抱いていると知ったときから、俺は、麻緋にもわかって欲しくて、男として意識して欲しくて俺って言うようにした。


バカらしいことかもしれない。



そんなことで、この関係がどうにかなるわけでもないのに。



でも、小さな可能性だとしても、保険をかけておきたい。



もしかしたら、今は小さな可能性だとしても、日がたてばそれは大きな可能性に変わるかもしれないから。





好きだよ、麻緋。


世界で1番。


世界で1番身近にいるお前が、世界で1番好きなんだ。
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